2023年07月23日(日)
〜むし歯が発生する条件とは〜
こんにちは 歯科衛生士の小山です。
今回はむし歯を予防をしていくにあたり、まずはどのようにしてむし歯が発生するのか、どのようにして歯を守ればよいのかということについて書いていこうと思います。
前回の記事ではフッ素でむし歯を防ぐのは難しいと書きましたが、どのように歯を守れば良いのでしょうか。
むし歯を防ぐためには歯の構造を理解する必要があります。
歯は硬い石のようなイメージがあると思いますが、内部には顕微鏡的小柱が走っており、それが歯の中の栄養管の役割をしています。
実際には歯の中心の神経(歯の中の血管)から歯の表面に向かって栄養素や水分、酸素が運ばれているのが正常な状態です。
すべての細管には常に液体が満ちており象牙質、細管、エナメル質、そして歯の中心部にある歯髄と全て繋がってます。
このように正常な歯というのは組織として血液循環が存在して歯の表側に向かって内側から外側へと液体が流れ出ていることがわかります。
実際この溶液の流れがあるからこそ、口の中のむし歯菌や汚れが簡単に歯の内部に進入できない仕組みとして働いており、この働きが弱くなると口の中の細菌や汚れが歯の内部に浸透しやすくなります。
この仕組みを理解することがむし歯を防ぐために大事な役割になっており『免疫』として働いているのです。
また神経を取った歯の全体を被せ物で覆わなければならないのはこの『免疫』が存在しないため細菌や汚れが浸透しやすいからです(神経をとった歯の色が悪くなるのはそのためです)。そのため、なるべく神経は取らない方が歯を守るのに大切です。(当院がレーザー処置やポイックウォーター、食生活の改善をお勧めする理由は、仮に深いむし歯があったとしても神経を残せる可能性が上がるからです。)
歯の免疫についてご理解いただいた上で、むし歯の発生のメカニズムについてお話しします。
むし歯が発生するためには以下の3つの条件が満たされていなければならないことがわかってきてます。
①特定の細菌がいること
(プラークコントロールの状態)
②発酵性の炭水化物があること
(日頃の食生活の状態)
③歯が感染されやすくなっていること
(前述の歯の内部の液体の流れが正常に働いてない)
実際には、①と②の条件だけではすぐに神経に近い深いむし歯が発生することは考えづらいと言われています。
どんなに歯ブラシを頑張っても細菌を0にすることはできませんし、日頃の食生活の中で炭水化物を避けるということはなかなか難しいと思います。それでも溶液の、流れが乱れていなければむし歯はすぐには発生しないということです。
歯医者で行うブラッシング指導やメインテナンス、ポイックホームケア、また細菌の繁殖しやすい銀歯(金属は帯電するため細菌のような小さなものが電気的な作用で吸い寄せられてしまうため細菌のコントロールの難易度が上がります)を抗菌作用があるセラミックに変えるということは特定細菌を減らすということに役立ちます。2つ目の条件に関しては甘いものをダラダラ食べ続けるということを避けていただければと思います。飴を舐め続けるというのもなるべく避けた方が良いかもしれません。3つ目に関しては患者さんの生活習慣に依存します。メンテナンスに通っていてもむし歯になるという方は③の条件がむし歯を作ってしまう原因になっている可能性があります。
では、溶液の流れが乱れる要因とは?
①体のアルカリバランス
動物性タンパク質が多く植物性のビタミン、ミネラルが少なくなると体が酸性に傾きます。むし歯だけではなく様々な全身疾患のリスクも上げてしまいます。野菜よりもお肉や加工食品の摂取割合が多くなるとむし歯ができやすくなるのもその一つの例です。
逆に身体がアルカリ体質になると、身体の免疫が非常に高くなるので、癌やその他の病気にもなりづらくなります。
②精白糖(精製された糖質)
よく甘いものをとるとむし歯になる、また歯が悪くなりやすくなると聞くと思います。精白糖が多い食べ物は歯の内部の溶液の流れを外から内側にするため、歯に栄養が届きづらくなり歯質が弱くなったり、歯の外側の細菌や刺激が内部に入りやすい状態になります。
もし、歯が痛い時は直ぐに何か処置をしようとせず糖をやめてみると痛みがおちつく可能性もあります。
③ストレス
自律神経が乱れていると溶液の流れも乱れます。緊張すると口がかわいたり嫌な汗をかいたりする経験があると思いますが、同じように歯の中でも代謝のバランスが乱れてしまう可能性があります。
他にも薬の常用や運動不足、ビタミン•ミネラル欠乏なども溶液を外側から内側に流れることが分かっています。(野菜の摂取量が少ないとむし歯になりやすい)
このように歯もみなさんなの体と同じように細胞からできています。むし歯は生活習慣の様々な因子が複雑に絡みあい発生するものですので、フッ素を塗ったからと言ってむし歯ができないという単純な話ではありません。
またフッ素についてはこちらの記事をお読み下さい。
当院では、患者さんのお口の中に、もしむし歯があったとしても、すぐに安易な修復処置をせずに、口腔内の環境を整えたり、生活習慣を整えて様子を見ることが多いです。それはむし歯は原因が改善すれば進行が止まることも最近ではわかっているからです。
むし歯が進行しないような条件が満たせない状態でとりあえずの修復治療をしてしまうと、一時的な時間稼ぎにしかならず、数年後に内部でさらに大きなむし歯を作る可能性を残してしまいます。
患者さん自身で常に歯の免疫を維持するよう努力すると自然と体の健康にもつながります。私たちは細菌のコントロールやアドバイスをし患者さんの歯をむし歯から守る手助けしたいと考えています!